Kindle と Spotify で著者の体験をリアルに追体験する ~ 「ウルトラセブンが音楽を教えてくれた」青山通著
久しぶりにワクワクする本を読んでいます。
タイトルは「ウルトラセブンが音楽を教えてくれた」(青山通著、アルテスパブリシング刊)。
KAY2と同じ世代であればみなさん「ウルトラセブン」が大好きな方が多いでしょう。子ども向けの怪獣モノという世界を越えて、今や大人も大好き。深い内容を持って広い世代に、時代も超えて、今も様々なメッセージを訴えるシリーズです。私も子どもの頃何度も見た番組です。さらにヒロインのひし見ゆり子さんは、私が調布駅近くに住んでいた頃、調布在住で中華料理屋さんをやっていらっしゃったということもあり(お店で何度かおみかけしました)、大人になってもなんだか親しみを感じているドラマです。
この日、たまたまSNSで流れてきた書評を見て、即座にポチって読み始めます。IT技術の進歩の恩恵をかみしめます。
この本は、ウルトラセブンの最終回に使われていたクラシック音楽に衝撃を受けた著者が、その音楽を探し求め、そしてついに見つけ出すまでの過程。そして、さらにウルトラセブンの音楽からみたオススメ回、そして聞き比べの楽しみ……など、クラシック音楽の楽しみ方を紹介してくださる本でもあります。2013年に初版出版とありますから、10年以上知らずにいた本です。へぇ、こんな本があったの!
クラシック音楽好きでもあるKAY2、その内容を知り、「即ポチっ」でした。(^^)
さて、読み始めると、もう一気に引き込まれます。
え?これって自分の体験とよく似ている!!
そうなんです。
著者の青山さんがまだ子どもの頃、毎回楽しみに見ていた「ウルトラセブン」。その最終回、主人公のダンがアンヌに自分がウルトラセブンだと打ち明けるシーン。そこで、突然、オーケストラとピアノの音が劇的に鳴り響く。その音楽に衝撃を受けた当時7歳の青山少年はその音楽を探し出そうとするのです。
まだビデオもネットもない時代ですから、困難を極めます。私も同じようにテレビを見て「いいな!」と思った曲がわからずにいた体験があります。
青山さんの場合、その後、偶然見ていたテレビで同じ曲がかかり、母親からこの曲がシューマンのピアノ協奏曲、第一楽章だと教えてもらうことが出来たのですが、そこで大きな壁が。
実際にレコードを買ってみると、ドラマで感銘を受けた演奏と違う……。これもわかります!
テレビやラジオで、あ、この音楽いいな!と思い、曲名がわかっている場合、レコードを購入。ところが演奏が全く違う。そう、クラシック音楽は演奏家によって解釈が違うのですから……。当時は試聴なんてのは出来ないので、レコード購入はまさに「バクチ」でした。
そんな懐かしい記憶もよみがえりながら読み進みます。著者はその後もその演奏を追い求め、最終的に友人のお兄さんがかけてくれたレコードがまさにそれ!それが4枚目に買ったレコードとなります。その演奏はピアノがディヌ・リパッティ、指揮はヘルベルト・フォン・カラヤン、オーケストラはフィルハーモニア管弦楽団の演奏のものでした。探索の旅、7年目の出来事。
そこから、さらにこの本では様々な演奏をめぐる話などになっていくのですが……、詳しくは本書をお読みいただくとして、一つ今回の読書で面白い体験ができました。
そうなんです。著者が最初に4つの演奏を体験していくのですが、それぞれ、今は全部音楽配信(サブスク)で聴くことができるんです。
最初に青山さんが購入したレコード。ピアノはアルトゥール・ルービンシュタイン、指揮はカルロ・マリア・ジュリーニ、オーケストラはシカゴ交響楽団のもの。
どう違うのかという説明を読み、これは興味が湧きます。すぐに手元のスマホでSpotfyを立ち上げ検索するとあります!プレイボタンをタッチしてみると……。
なぁるほど!確かに著者の言うように「枯山水!」。ゆっくりとしたテンポ。そして、大芸術家の音楽世界が広がります。
次に著者が購入したのはピアノがヴィルヘルム・ケンプ、指揮はラファエル・クーベリック、そしてオケはバイエルン放送交響楽団です。
こちらもSpotifyにあり、再生。うん、「楽譜に忠実な」「折り目正し」い演奏であることがわかります。なぁるほど。これもまた確かにリパッテイの演奏とは大きく違いますねぇ!
そして三枚目、こちらはピアノは同じリパッティですが、指揮者はエルネスト・アンセルメ、オーケストラはスイス・ロマンド管弦楽団です。こちらもSpotifyで発見!
聞いてみると、なぁるほど、これはカラヤン版と似た部分もありますが、やはり、テンポの取り方など、異なりますねぇ!
と、こうして、通常なら著者の文字を追いながら頭の中で演奏を想像するという作業をしなければならないのですが、全面的に自分の想像力に頼るので、不確実きわまりないものです。ところが、この方法だと著者と同じ音を聞きながら著者の言わんとしていることを正確に理解できる。これ、画期的ですよね。読書という作業は何百年も前からあるものですが、ここに至って画期的な読書の仕方が現れたと言えるのではないでしょうか。
というわけで第一章を読み終えた時点で、興奮してつい、この文章を書いてしまいました。
さぁ、それでは続きの第二章から読書を続けることにしますね!
あ、一つ余談を。
リパッティはルーマニアの人。そして、この曲の演奏に近いと青山さんが指摘するのがハスキル。こちらもルーマニアの出身。そして実は私がこの曲の演奏で一番好きなのがラドゥ・ルプー。こちらもルーマニアの人。そういえば、何かしら共通するものがあるかもしれませんね。
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